2011年1月11日火曜日

銀行窓口で思う

私は今年、区の会計を担当しているので銀行に時々行く。窓口で伝票に記入して通帳とハンコで出し入れするという今どきめったにないことをしている。
キャッシュカードくらい作っておけばいいのにとも思うのだが、1年ごとに交代していくせいもあって暗証番号管理などが面倒でそのままにしているようだ。もちろんネット決済など論外である。

でまあ、めったに行かない銀行窓口に足を運ぶと、昔ながらの紙と通帳とハンコでの出し入れをしている人がけっこういる。仕事や公職で来ている人(私も含めて)を別にすれば、あとはほぼ全員お年寄り。だから空気がほわんとしていて時間がゆっくり流れている気がする。
窓口職員に教えてもらいながら伝票にゆっくり記入しているおじいさんがいる。
テレビに夢中になってしまって呼び出されても気づかないおばあさんがいる。
来年のカレンダーが入れてあるダンボール箱に「自由にお持ち帰りください」と大書きしてあるに「これ、もろうてもええやろか」と尋ね、その声が遠慮がちで小さいものだから職員の耳に入らず、ちょっと困って気づいてくれるのを待っているおばあさんがいる。
こちらの置かれた状況次第ではいらだってしまうかもしれないくらいの、どこまでも善良で、どこまでもマイペースな世界。
いつの間にか私もこの空気にいらだつことのない年齢になったのかなあとちょっと苦笑い。

小浜は交通インフラが整っていない。バスは通学する中高生のため以外にはあまり走っていない。電車も通学通勤時間帯をのぞけば空いている。4人がけシートを独占できないことなど滅多にないくらいに。
そんなまちで、ネットはもちろん、キャッシュカードとも無縁で暮らすこの人たちは、自宅から歩いて、もしくは自転車で危なくなく移動できる範囲の中で、どこまでも善良に静かにつつましく暮らしている。
そういう人たちの多くは「強くない立場の人たち」だ。お年寄りもそうだけれど子どもたちもそうだし、女性の多くもそうだ。障害を持った人たちもいる。
そういう人たちに視線を向けて活動しているボランティアグループが小浜にもいっぱいある。
そしてそのボランティアグループの人たちも、多くが「強くない立場の人たち」だ。

いっぽう、政治をやっている人たちの行動原則というか発想みたいなものは、どうも「強い立場にいる人たち」のものだなあと感じることが多い。
政治だけではなく、「社長」をやっている人たちの多くもそうだ。まあアグレッシブで強いからこそ社長になったのだろうし、社長をやっていられるのだろうが。
「ボランティア代表」みたいな立場でそういった「小浜市を引っ張っている人たち」と接するとき、その人たちと、市井のボランティアの人たちの発想や世界観や行動原則の落差に驚くことも少なくない。
特に政治をやっている人たちとボランティアの人たちの「ずれ」は、それが顕在化すると結局ボランティアさんたちが悲しい目にあうことが多いだけに、残念というより悲しい気分になることもことがしばしばだ。
それは誰が悪いということではない。まあ感性の違いみたいなものだ。でもできるならばそれで人がすれ違ってしまうこともあるということに気づいてほしいなあと思う。

だから私は政治家が好きではないし(政治に関して意思や思いがないということではない。それは極めて個人的な、かつ譲れないものだから表に出さないだけだ)、「まちなか夢通り」のように行政にも経済界にも頼らずにできたイベントは、そのことがすごく嬉しかったりする。
あくまでボランティアの発想や行動原則で、強くない人たちが翻弄されることが我慢ならないという思いを行動動機にしたままで、同時にまちづくりもできないだろうか。
ずっと考え、追いかけている思いである。

4 件のコメント:

  1. ベッコ王子2011年1月12日 7:49

    ボランティア発想や行動原則で、弱者の立場に立っての街創りは理想ですね。
    神戸では戦後の高度経済成長の中で、 震災直後、行政に依存したり、行政サービスに期待できないことを身に浸みて住民が知りました。
    いち早く復興区画整理や再開発事業の計画を策定し、一気に計画決定しようとした行政に対して、住民意思の反映を求め自発的に「まちづくり協議会」を組織して、行政案に反対して立ち上がった地域も多かったです。(私もその一人でした)

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  2. ギクッ。私も一応社長だったりしちゃいます(汗)。
    確かに自分の慌ただしさから「人の痛み」を忘れがちな昨今。
    心に染みいるお言葉でした。
    自分も「弱い立場の人」への配慮を忘れずに精進致します(^_^)v。

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  3. 新聞だったかネットだったか、ハッキリと覚えませんが、無償支援に対する批判記事を思い出しました。

    それは「無償支給に群がるのは情けない」みたいな内容だった気がします。
    一昨年の年越し村のことだったかな?

    ボランティアを受ける側は無償、簡単に言えば「タダ」だけど、どうもそれが納得できない感じでした。それだと、高速道路無料化も情けないのだろうと思います。

    無料化は弱い立場の人には最適に見えますが、対して逆の発想もあるようですね。
    高速道路の無料化は個人的には止めて欲しいです。別な場所が渋滞して困っていますよ(-_-)

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  4. ベッコ王子さん、まさに阪神大震災がわが国のボランティア活動のうねりが大きくなったきっかけでしたね。あの直後にナホトカ号があって・・・・
    自分たちで自分たちのまちを作るという意識、大事にしたいと思います。

    知床さん、行政が知らず知らず(あるいは見なかったことにして)弱い立場の人を悲しませるのを抑止する役目もぜひになってください。そういうことをしてくれる人が必要だと思います。

    くりろうさん、無償・無料とはちょっと違う話ですけど、「ブランティア」=「タダ」という発想はやはりありますね。悲しいことながら。

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