2011年1月29日土曜日

坂道に住む人たち

区の壮年会旅行で広島県の尾道に来ている。
平成10年か11年に尾道松江道の地質調査の仕事で訪れ、昨年は口頭試験ツアーの中でえひめみかんさんの車に乗せてもらってしまなみ海道を渡って以来だが、市内をうろついて泊まるのは初めてなので楽しみにしていた。

ここで鉄板焼きを食べました
レンコン、砂肝、カマボコが入るのが尾道スタイルとか
朝8時に出発してひたすら西へ、尾道に到着したのは午後1時をすぎていた。
昼食は鉄板焼き(お好み焼き)。NHK朝の連ドラで「てっぱん」をやっており、小浜もかつて同様に「ちりとてちん」で朝の連ドア舞台になった親近感から尾道を旅行先に選んだのだ。


まんまとつかまって、キンチョーしつつ答える壮年会メンバー^o^;
で、まあそのためかもしれないのだけれど、まんまとNHKが「尾道に鉄板焼きを食べにやってくる旅行者が増えた」ということで取材に来ていた。

ほうほうのていで逃げ出して尾道ロイヤルホテルにチェックイン。ここからは自由行動である。
私はやはり「まちなみ」が気になるし、観光客がどわっと増えた中でどのような工夫をしているのかが気になるところなので、「坂のまち」をうろうろしていた。

山門をくぐって先に行くと・・・・
道路と線路の向こうに本堂が・・・・
尾道の市街地は、海岸平野に細長く延びる「下町」と、道路・線路よりも山側に広がる坂道のまちに分かれているようだ。


お寺の横から山のほうに道が伸びる。車は通れない。

ところどころに井戸があって、手押しポンプとお地蔵様がある

とにかく狭い坂道

石段を上がっていく。息が弾む。

かなり急な坂道

趣のある玄関門

レストカフェらしい
猫をテーマに空き家を活用していろいろやっている人(グループ?)がいるらしい
坂を上りきったところにある千光寺。観光客が集まってくる所にある。

千光寺から尾道市外を望む。向こうにしまなみ海道が見える。

坂の途中にある趣のある民家。車はもちろん入ってこれない。
志賀直哉旧居。質素な平屋だ。
千光寺から降りていくと、とにかく急な狭い坂が続いていることが改めてわかる。
夕闇が迫って薄暗くなり、人通りが少なくなってくると、「レトロないい雰囲気」だった坂道はなんともうすらさみしいものに感じられてくる。

なんというか、とにかく「坂のあるまち」での生活は並大抵ではないようだ。
車は到底入ってこられず、毎日急な階段を何十mも上り下りしなければならない生活は、想像を超えている。宅急便の配達物を抱えてえっちらおっちら上っていく配達員の姿がテレビで流されているけれど、そこに住んで毎日坂道を上り下りして生活している人は本当に大変だなあと思う。

坂の一番上にある廃屋
こういう「どうにもこうにも利便化しようがない」まちだからこそいろんな「古いもの」が残り、それが今観光資源になっているのだろう。
観光って、「モノ」があるだけじゃなくて、それが観光資源となるような様々な条件~ストーリーとかタイミングとか観光客の変化とか~がうまくかみ合わないとダメなんだろうな~と新ためて実感する。

しかしそれにしても、このまちは市民生活と観光がうまくかみ合うことのむずかしさがきっとあるのだろうなと強く感じた。
この急な狭い坂道で暮らす人たちの大部分にとって、観光客が増えたということは、家の前を通り、時に覗き込んだり写真をとったりする人たちが増えたという以外のものではないのかもしれない。

志賀直哉旧居の横にある閉鎖された喫茶店「都わすれ」
観光客増加の恩恵を直接的に受け取る人たちと、観光客が主に訪れるところに住んでいる人たち(すなわち観光資源である『坂のあるまち』を守っている人たち)が必ずしも同じでないところに難しさがあるのだと思う。
これは小浜でも同じだと思う。
それなら観光客から直接的に「稼ぐ」ために家を改装して何かの店を始めるというのもひとつの手だろう。
でも、「NHK朝の連ドラ」という半年しか続かないコンテンツをベースにしていることによる「一過性のブーム」、平日の観光客の少なさなどを考えると、観光客が少なくなる→さびれる→さらに観光客が少なくなるという負のスパイラルに極めて短期間のうちに陥ってしまいそうな懸念があるから、そうそう踏み出すこともできないだろうと思う。

坂の下、線路の近くにある喫茶店。流行っていた。
なんだかいっぱい考えさせられつつ坂を降りた。
あまり時間がなかったから、とうてい全部回りきることはできなかったし、ゆっくり見学したかったなあと思うものもいくつかある。
でも、「じゃあリピーターになるか?もう一度この坂道を歩きに来るか?」と言われると、やはり来ないような気がする。
私は確かに旅が多いが、それはセミナーツアーと抱き合わせだからであって、観光目的での旅行はほとんどしないし、するとしてもまだ見ていない観光地に行くほうを優先するだろうから。尾道が車で2時間程度のところにあれば別だけど、5時間近くかかるからなあ。
・・・・そうなんだよなあ。「また来てもらう」ということは本当に大変なのだ。
だから「近くにいる人」が何度も来てもらうような工夫が絶対に必要なのだろう。

ホテルに戻り、夕食はおそらく古い旅館を改装したと思われる居酒屋で、美味い刺身や焼き味噌、鍋などを楽しんだ。食に関しては大満足だ。

食事が終わり、軽く酔ったので喫茶店にでも入って熱いコーヒーを飲みながらリーダーでも読もうかなと歩き出したのだが、驚くべきことにアーケードのある商店街が完全に全店閉まっている。まるで「みんな店を閉めるんだよ。抜け駆けはいけないよ」というルールでもあるかのようだ。土曜日の8時前なんだけど・・・・
散々歩き回って、居酒屋やラーメン屋以外まったく開いていないことがわかったので、コンビニでコーヒースティックを買ってホテルに戻り、サーバーで湯を沸かして紙コップでインスタントコーヒーを飲んだ。^o^;


2 件のコメント:

  1. 自分が通った頃と比べると、ずいぶん坂道が整備された印象があります。
    今の「てっぱん」は大林組豊富なキャスト、ちりとてちん/その街の子ども スタッフ
    相まって欠かさず観ています。
    あまり坂の町はフューチャされていませんね、ドラマ内では。
    工業のまち、という視点はこの街の捉え方としてはあまりなかったかも。

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  2. 確かにこれといった坂道は石畳というか模様の入った石で舗装されていました。観光用道路の明示みたいな感じでしたね。
    いいまちだと思いますよ。利便性とのトレードオフが過度に顕在化さえしなければ。

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