2012年2月15日水曜日

自分の書斎

年末に本棚を少~しだけ整理した。整理というより、何か面白い・懐かしい本はないかと探していたといったほうがいいかもしれない。
そんな中に、ずっと前に古本屋で買った山根一眞氏の「スーパー書斎の仕事術」があった。
この本が出たのは1985(昭和60)年。私が社会人になった年である。
NECがPC-9801F2という、はじめてフロッピーディスクを搭載した16ビットパソコンを世に出した年であり、そしてそのマシンはN88-BASICでプログラムが組めなければただの箱であった。私が入った会社でも日本語ワープロ専用機がデスクトップマシンとしてどでーんと座り、フロッピーディスクの辞書をカッタンなどと音をさせて読み込んでは文節単位で変換していた時代だ。
そんなデジタル時代のまだ入り口をくぐりきっていない頃に出版されたこの本は、「個人情報整理の古典」などとよく言われる。それは「袋ファイル」という今の時代にも十分通用する個人データベースシステムを提唱したからだ。

袋ファイルというのは何のことはない、角2封筒(A4サイズが入るサイズ)の頭を切り詰め折り返しのない袋状にして、その中に書類でも写真でも放り込んでおくというものだ。そして封筒の端っこに分類ワードを書いて整理する。
山根氏はアイウエオ順に、かつ定尺の枠を設けてきちんと書いて分類しているが、このあたりはその後いろんな方法が提唱されている。たとえば野口悠紀雄氏は枠など使わずざっとテーマを書き、これを時間順に並べる方法を提案していて、それはそれで機能的でもあった。
私もこれには大いに感化されて袋ファイルシステムをさっそく導入したものだ。
もっとも社会人になって数年で、会社と自宅の往復しかしておらず社会活動もしていないような者には袋ファイルで分類しなければならないような書類が自宅にあふれているはずもなく、新聞の切り抜きを集めたりして無理に分類整理していた。つまり典型的な形から入ったというか手段が目的化していたわけですね。
会社ではそこそこに仕事やいろんな情報があるから、そこそこに意味を成し、10年後にはある程度機能的な整理システムになっていた。私の場合はアイウエオ順でも時間順でもなく、5つほどの大分類ごとに小テーマで分類したものが一番合っていたようだった。
自宅の袋ファイルも社会活動をするようになってからは増え続け、いつの間にかそこそこの量になっていた。といっても200袋もなかったとは思うが。

それを2年か3年前、全部スキャンして電子化し、ほぼすべて捨ててしまった。スキャナ(ScanSnap)とエバーノートの導入が決め手であった。
袋ファイルに記入する分類名がエバーノートのノート名であり、さらにスキャンした書類の内容もOCRされているのでそれも含めて検索対象になるから、これはまったく袋ファイルの機能をほぼ網羅しているといえるものだ。ただしスキャンすればいいというものではないもの、たとえばCDとか有印文書、なんらかのブツそのもの(旅行に行った時のオミヤゲなど)については、それも封筒に放り込んでおけばよかったので、それについては電子化でカバーしきれない。でもまあそんなものは少しだけだ。

とはいえ、今でもこの「古典」を読むのは楽しい。「今風」に裁断して自炊し、リーダーに収め、最近空き時間に読んでいるのだが、今の時代にそのまま適用できる整理術はほとんどないものの、「自分の身の回りを機能的にしていく工夫」を読んでいるのが楽しいのだ。
マンションの隣が空いたのでこれを借りて、本棚を置いてホームセンターで買ってきた板やらアングルやらで機能的な書棚にしたり事務作業と思考作業に合わせたレイアウトを考えたり、つまりは「自分の城」を作りこんでいく過程は、読んでいてワクワクする。「自分の書斎」ってのはやはり夢ですからねえ。
考えてみれば私はいまだにそれを持っていない。自宅仕事部屋(変形8畳間)は女房と共有である。まあ事実上大部分をわが物にはしているし、2人が同時に作業をしていることもあまりないのでストレスにはなっていないけれど。
スキャナ&エバーノートのおかげで「書類」は横置きにしたカラーボックス1つに十分収まっているし、何よりもクラウドのおかげでPC1台とWiFiルータ、あとはせいぜいギャラタブがあれば、ファミレスやホテルで大部分の仕事はできるようになった。だから着替えの心配さえなければボディバッグ1つでノマドができる。着替えを含めてもせいぜいデイパック1つあれば十分だ。
私はいつの間にかあんなに憧れていた「書斎」が特になくてもいいと思える生活スタイル・仕事スタイルになっているのだなあと、「古典」を読みながら再認識した次第である。

2 件のコメント:

  1. 書斎の夢は消えませんが、クラウド上で書斎の機能は果たせる時代が来ていますね。

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  2. そうですね。私も自宅仕事部屋は「複数のPCを同時に使って仕事ができる」以上の意味がなくなりつつあります。あ、コーヒーをタダで飲めるというポテンシャルが残っているか。^o^;

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